発達障害(学習障害)について

発達障がいについて

 みなさんは、自分自身の長所や短所について考えたことがあるでしょうか。私の短所の一つに「過去のことをよく忘れる」ということがあります。たとえば、同僚に、「去年の運動会で取り組んだ高学年の演技、なんだったかなあ」と尋ねられるとします。でも、ぱっと出てこないのです。それを聞いていた周りの人が、「騎馬戦だったなあ。赤が勝って、大将の男の子が得意げだったなあ」「そうそう、あの大将は白に三連勝したなあ」こんな話が出ても、「えっ、そうだったっけ」と思い出せないのです。こんなことはよくあり、その内、周りの人は私に過去のことは尋ねなくなりました。こんな時の自己評価は、「俺って、頼りないなあ」というものでした。
 他にもあります。私は、字がうまくありません。子どもの頃、習字は習わなかったですが、教師になりペン習字の塾に行ったり、習字の通信教育で学んだりしました。ペン習字の教則本も本屋で購入し何冊も買って練習しました。しかし、うまく書けないのです。
 先輩の先生に相談すると、「昔から、『手がいい、手が悪い』といって、字が得意な人、そうでない人がいるもんだ」と言われ、そんなものかなあと思ったことを覚えています。まだあります。家内に言わせれば、私は、じっとしていないのだそうです。日曜日、仕事をしていたかと思うと畑にいる。畑にいるのかと思うと洗車をしている。その後は、買い物に行って、料理を作っている…と、このように動きっぱなしだそうです。私は、それを意識してしているわけではなく、自然にしています。そういえば小学生の頃、じっとしていなくてよく注意されました。両親からも「お前は落ち着きがない」とよく言われました。よく動く自分自身のことを「自分の短所だ」と思っていました。
・記憶が悪いのは頭が悪い。
・字が下手なのは手が悪い。
・じっとしていないのは落ち着きがない。
そう思って、ずっと過ごしてきました。

平成十九年に特別支援教育が始まりました。
 最初は、「どうせ看板だけ変えて、中身は変わらないんだろう」と思っていましたが、だんだんと特別支援教育は、現場に浸透していきました。そうした中で、特別支援学級を担任したり、通級を担当したりしながら、特別支援教育を学んでいきました。特別支援教育に馴染みがない方もおられるので簡単に説明すると特別支援教育とは「一人一人のニーズにあった教育」といえます。
 それまでの教育は、子どもが教材や学習方法に合わせていたのに対して、特別支援教育では、教材や学習方法を子どものニーズに合わせるところが大きく違います。
 例をあげます。教科書が読みにくい子どもがいたとします。
 今までなら、それは子どもの責任であって、その子が読めるように努力するべきだと考えられてきました。ところが、特別支援教育が始まってからは、教科書が読みにくい子には、読みにくい原因があって、そこを元にした支援が必要だというように変わってきました。
 たとえば、拡大した教科書を渡す。読み仮名を打つ。文中の言葉のまとまりが分かりやすいように、文に線を入れて区切るなどです。このように、子どものニーズに合った教育が一般的になってきつつあるのです。
 私は特別支援教育から発達障がいについても学びました。
限局性学習症
・注意欠如多動症
・自閉スペクトラム症
・発達性協調運動症

 私は、どうやら、注意欠如多動症や発達性協調運動症に関係があるようです。そうすると、自分自身のいろいろなことが分かってきました。

一年前の運動会のことが思い出せない。
 ・長期記憶の中には三種類の記憶がある。 
  エピソード記憶(思い出を記憶するなど)
  意味記録(言葉の意味や計算の仕方を記憶するなど)
  手続き記憶(意識しなくてもできる記憶。自転車の運転、楽器の演奏など)  
  私は、この中で、エピソード記憶が弱いのです。

 字が上手に書けない。
 ・体幹が弱く、手先が不器用である。

よく動く
 ・衝動性が高く、多動気味である。不注意も多い。

 つまり、私が、自分の短所と捉えていたことは、生まれ持った個性であることが多いことに気づいてきたのです。自分自身は、自分の意志で歩んできたつもりでしたが、実は、個性に操作されていた事が分かってきたのです。
 しかし、環境を整えたり、自分に合った方法を使うことで、ずいぶんと改善されることも知りました。
 さらに勉強をすると、短所と思われていた私の個性のいいところに気づいてきました。つまりコインの裏表で「よいは悪い。悪いはよい」ということです。
 長期記憶のエピソード記憶がよくない私は、嫌なことも忘れますので、昔の失敗にくよくよ悩みません。
 不器用ですから、伸びシロが多いです。
 多動ですから、とても活動的で、休みなく動けます。燃費がいいです。

 今、私は、こういった特性のプラス面を活用し、楽しい人生、充実した人生を歩めています。苦手なところは支援の方法を考えて補い、得意なところを伸ばしていくそうすることで、発達障がいは最大のアイテムとなります。
 さあ、発達障がいを最大のアイテムとするために、まずは自分自身を見つめ、自分の個性を知り、その生かし方を考えていきましょう。